まとめ

「コーヒー」を用いたフェルミ推定の考え方。様々な角度からアプローチして柔軟な思考を!

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外資系のコンサルティングファームへの就職を目指すのであれば、避けて通れないのがフェルミ推定です。

フェルミ推定では仮説立案能力や思考力、プレゼンテーション能力、コミュニケーション能力、修正力など、コンサルタントとして仕事上求められる様々なスキルの評価が下され、内定の可否を大きく左右します。

コンサルティング業界は実力主義の風潮が強いだけに、フェルミ推定である程度「力のある人材だ」という評価を受けられないと、内定を勝ち取るのは難しいでしょう。

フェルミ推定はある程度出題の傾向はあるものの、そのテーマは多岐に渡っており、実際に面接に足を運ばなければどのような問題が出題されるのか分かりません。

そのため、事前にしっかりとトレーニングを積み、どのような出題にも対応できるだけのアプローチ方法を習得しておく必要があります。

この記事で解説しているコーヒーをテーマにしたアプローチは、他の幅広いテーマにも応用させることができる考え方です。

問題に対しての具体的な回答ステップも解説していますので、是非参考にしてください。

「コーヒー」を題材にしたフェルミ推定の出題例

コーヒーを題材としたフェルミ推定は様々な角度から出題される可能性があります。

具体的にいくつか過去の出題例を紹介しましょう。

  • 日本全国で1年間に飲まれるコーヒーはどのくらいか
  • 新幹線の車内販売のコーヒーの売上はいくらか
  • 東京都内にコーヒー販売店は何店舗あるか
  • とあるコーヒーショップの年間売上はいくらか
  • コーヒー産業の市場規模はどのくらいか
  • とあるコーヒーショップのデカフェコーヒーの売上はいくらか

同じコーヒーをテーマにしたフェルミ推定ではあるものの、出題内容によって当然アプローチは変えていかなければなりません。

また、個別コーヒーショップの売上を求める場合には、「その売上を伸ばすためにどうすればいいか」という解決策もセットで考えておく必要があります。

そのためにも、しっかりと事象の因数分解を行い、自分で考えやすく整理しておかなければなりません。

【例題①】「コーヒー店の売上」をフェルミ推定で考えてみよう

実際にコンサルティングファームのフェルミ推定で問われることも多い「コーヒー店の売上」について、その回答アプローチ方法を解説します。

STEP①複数の視点からアプローチ方法を考える

まずはどのようなアプローチから、コーヒーショップの売上を算出するか、考えてみましょう。

基本的な売上の計算式は、「売上=来客数×単価」です。

例えば客単価が500円で年間の来客数が7000人だとすると、このショップの年間売上は350万円であると計算できます。

公式自体は同じですが、来客数を考えるためのアプローチ方法としては需要サイドと供給サイドの2通りがあります。

まずはそのどちらを使って思考を進めていくか、選択をしなければなりません。

STEP②視点ごとに要素に分解して、公式を組み立てる

売上=来客数×単価の「来客数」という要素について、需要サイド供給サイドそれぞれに分解してみましょう。

需要サイドから考える場合には、「来客数=商圏人口×ショップの利用者割合×1人当たりの利用頻度」と分解できます。

例えばそのショップの商圏に5万人が居住しており、10%の人が1年間あたり平均40回コーヒーショップを利用しているとしましょう。

するとこのショップの年間来客数は

来客数=5万人×10%×40回=20万人

と計算することができます。

一方で供給サイドから考える場合には、「来客数=1時間あたりの来客数×営業時間×営業日数」と分解できます。

さらに「1時間あたりの来客数」は、「席数×稼働率×回転率」と分解も可能です。

稼働率とは店内の満席率、回転率は1つの席に1時間に何人が座るかということを意味します。

例えば店内に30席あり、常時稼働率は80%、回転率は2としましょう。

さらに営業時間は10時間、年間360日営業をしているとすれば、このショップの年間来客数は

来客数=30席×80%×2回転×10時間×360日=17万2800人

という計算になります。

STEP③考えやすい公式を選択する

さて、上記で立てた2つのアプローチ方法について、比較検討してみましょう。

需要サイド 売上=商圏人口×利用者割合×1人当たりの利用頻度
供給サイド 売上=席数×稼働率×回転率×営業時間×営業日数

それぞれの要素を見てみると、需要サイドの「商圏人口」というのはかなり曖昧な定義のように感じられます。

半径何メートルを商圏人口とするのか、なかなか定義は難しく、その設定次第では求める売上高の桁も大きく変わってくるかもしれません。

さらに、住人だけではなく仕事でその近くを訪れている人が利用する可能性などもあり、具体的に商圏人口を定義するのはかなり難しいのが実情です。

一方、供給サイドの要素を見てみると、特に問題はなさそうな感じがします。

回転率はある程度限界も想定することができるため、自ずと来客数の上限も見えてくるはずです。

そこで今回は、供給サイドからのアプローチにより、コーヒーショップの売上高を求めていくことにしましょう。

なお、今回は需要サイドと供給サイドそれぞれからのアプローチ方法を紹介しましたが、実際の面接本番では制限時間も短く、プレッシャーもあるため十分な時間を確保できないかもしれません。

そのため、基本的に個別店舗の売上高などミクロな数値を求める場合には供給サイドから考えるというアプローチを採用すればOKです。

逆に需要サイドからのアプローチが有効になるのは、全体の市場規模、カフェチェーン店の全体売上などマクロな数値を求める時です。

もちろん、もっと柔軟に考えなければならないことも多々ありますが、基本的には

  • ミクロの数値:供給サイドから考える
  • マクロの数値:需要サイドから考える

というアプローチになることを頭に入れておきましょう。

STEP④実際の条件を想定して数値を当てはめていく

ここまで数値が出そろったら、後は提示された条件に従い、具体的な数値を代入していきます。

こういった個別店舗の売上を求めるにあたって、大前提として確認しておきたいのが以下の2点です。

  • 店のロケーション
  • 店の広さ

ロケーションについては、駅前なのか住宅街なのか、オフィス街なのか、ショッピングモールの中なのか、などそれぞれの条件次第で大きく数値は変動し得ます。

また競合の出店状況なども考慮しなければなりません。

店の広さは席数とも密接に関係し、それは当然全体の来客数にも大きく関係します。

よって、このあたりの前提条件はできるだけ具体的にしておくようにしましょう

今回は東京23区内のオフィス街にある、30席程度のコーヒーショップを想定します。

オフィス街ということで、基本的にはかなり混雑していることが予想されるので、稼働率は90%としましょう。

ただし、忙しいビジネスパーソンが非常に多く、店内の滞在時間は非常に短いと考えられます。

滞在期間を20分とすれば、1時間に3回転できることになるでしょう。

しかし中には勉強や仕事目的で、長時間店内に滞在するケースもあるため、すべての席が3回転するというのは少し考えすぎかもしれません。

そこで少し控えめで2.5回転くらいで見積もるものとします。

あとは営業時間と営業時間と営業日数の条件が揃っていればOKです。

オフィス街ということで営業時間は7時から22時の15時間、営業日数は年始の3が日を除いた362日、そしてコーヒーショップの客単価は400円と仮定しましょう。

では全ての数値を当てはめてみます。

売上高=30席×90%×2.5回転×15時間×362日×400円=1億4661万円

以上、東京のオフィス街にあるコーヒーショップの1年間の売上高を計算することができました。

ちなみに帝国データバンクの調べによると、売上高が1億円未満のコーヒーショップは全体の7割を占めるようです。

今回検討したのは、比較的来客数が多く見込める都心のオフィス街ということで、それなりに妥当性のある数値となったのではないでしょうか。

【例題②】「新幹線の車内販売のコーヒーの売上」をフェルミ推定で考えよう

続いて、上記の「コーヒーショップの売上高」とはまた別のアプローチで考える必要がある「新幹線の車内販売のコーヒーの売上」をフェルミ推定で考えてみましょう。

STEP①アプローチの方向性を考える

まずは新幹線の車内販売のコーヒーの売上高を求めるための計算式を考えてみましょう。

売上高=コーヒーの購入人数×単価

となります。

STEP②視点ごとに要素に分解して、公式を組み立てる

立てた式について、需要サイドと供給サイドから「コーヒーの購入人数」という要素を分解してみましょう。

需要サイドの場合は、「コーヒーの購入人数=新幹線の利用人数×コーヒーの購入率×購入回数」により求められるでしょう。

一方供給サイドの場合、これといって分解する方法が見当たりません。

新幹線の席数を基準にしたとしても、稼働率や回転率といった数値はなかなか考慮しづらいでしょう。

よって、今回は需要サイドからのアプローチが適切であると考えられます。

STEP③曖昧な条件はさらに分解しながら、要素ごとに検討していく

では実際にそれぞれの要素について、考えてみましょう。

まず母数となる新幹線の利用人数ですが、パっとイメージできるものではありませんね。

そこでさらに要素を因数分解して考えてみます。

すると、以下のような計算式を導けるでしょう。

1日の新幹線の利用人数=新幹線の走行時間(営業時間)×車両数×1両当たりの客数×1時間あたりの本数×2

最後に2を乗算するのは、新幹線が往復するためです。

新幹線の走行時間(営業時間)はおよそ朝6時から夜23時くらいの17時間と想定できます。

車両数は16両編成が多いものの、8両編成などもあるため、平均として14両、そして1両当たりの平均客数は40人とします。

新幹線は15分に1本程度運行しているので、1時間あたり4本と想定しましょう。

上記の数値を実際の式に当てはめると

新幹線の利用人数=17時間×14両×40人×4本×2=7万6160人

と計算できました。

よってこれに365をかけることで、年間2779万8400人の新幹線利用者がいると推測できます。

続いてコーヒーの購入率を考えてみます。

もちろん、すべての客層がコーヒーを購入するということはなく、主に以下の条件を満たしている人のみがコーヒーを購入するでしょう。

  • サラリーマン
  • 新幹線の乗車時間2時間以上

平日はビジネス目的で新幹線を利用する人も多いので、サラリーマン率は60%と見積もります。

このうち乗車時間が2時間以上になるケースですが、東京から出発した場合、名古屋以西へと向かうことが多く、必然的に乗車時間は2時間を超えるため、乗車時間が2時間以上の割合は70%程度と見積もることができます。

よってこの2つの要素を勘案して、新幹線車内におけるコーヒーの選択率は42%と推計できます。

ただし、夜の新幹線利用に際しては、睡眠への影響も踏まえてコーヒーの購入を控える人も増えるでしょう。

また、コーヒーではなくアルコールを選択する人も多くなるはずです。

よって実際には全利用者のコーヒーの選択率は30%程度になると考えられます。

そして最後はコーヒーの購入回数ですが、東京から博多に向かうなど、かなり長期で乗車する人が2杯以上飲むこともあるので、1.2杯程度と見込めます。

最後にコーヒーの単価は300円程度です。

STEP④数値を代入して数量を求める

ではここまでである程度数値が出そろったので、式に代入していきましょう。

新幹線の車内販売のコーヒーの売上=2779万8400人×30%×1.2杯×300円=30億222万7200円

よって、1年間の新幹線の車内販売のコーヒーの売上高は30億222万7200円と求めることができました。

コーヒーを題材にしたフェルミ推定のポイント

コーヒーを題材にしたフェルミ推定を解くにあたっては、いくつか注意しておきたいポイントがあるので、確認しておきましょう。

ケース面接につながるよう因数分解を意識する

記事の冒頭でも説明しましたが、フェルミ推定を行った後に、「ではその売上を増やすための方法は?」とケーススタディに突入することもあります。

このケーススタディにスムーズにつなげるためにも、しっかりと因数分解を行い、ボトルネックを見つけやすくすることが重要です。

そのため、後で見返した時にすぐにボトルネックを見つけられるよう、できるだけ構造的かつ分かりやすいメモを残しておく必要があります。

フェルミ推定中は、つい時間に追われて汚くメモを取ってしまうという人も少なくないので、この点はしっかりとトレーニングを積んで、綺麗で構造的なメモができるように心がけておきましょう。

複数の視点からアプローチすることが大切

フェルミ推定の考え方は決して1つだけではありません。

この記事で紹介した方法以外にも、様々なアプローチ方法があります。

コンサルタントには物事を多角的に見る能力も求められるため、事前のトレーニングの段階では、できるだけ様々な視点からアプローチしてみることを心がけましょう。

独自性のある方法でアプローチした場合、面接で高く評価されることもあります。

まとめ:コーヒーを題材にした問題でフェルミ推定の思考の幅を広げよう

この記事ではコーヒーを題材としたフェルミ推定の具体的な出題例やそのアプローチ方法を解説しました。

解説したアプローチ方法は、コーヒーをテーマにした問題のみならず、ほかの様々なテーマのフェルミ推定にも応用することができます。

コーヒーショップの売上と一口に言っても、考慮事項が非常に多く、フェルミ推定のトレーニングとしても最適です。

様々な角度からアプローチすることで視野が広がり、それはさらに柔軟かつスピーディーな思考へとつながっていきます

是非、同じ問題であっても様々な角度からアプローチすることで、考え方の幅を広げられるようチャレンジしてみてください。

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