外資系のコンサルティングファームなど、非常に就職難易度が高い企業の面接では、必ずと言っていいほどフェルミ推定が出題されます。
実力主義を重んじている企業も多いだけに、このフェルミ推定で満足のいく評価を得られなければ、内定を獲得することはできません。
フェルミ推定では捉えどころのない数量について、因数分解を行い、自分で手掛かりを探りながら求めたい数量を推定していきます。
色々なテーマが出題されるのですが、その中でもテーマになることが多いのが「コンビニ」です。
この記事ではコンビニを題材としたフェルミ推定の出題例を紹介し、その回答アプローチを詳しく解説しています。
他のテーマを題材としたフェルミ推定の問題にも応用できる考え方となっていますので、是非参考にしてください。
「コンビニ」を題材にしたフェルミ推定の出題例
まずはコンビニを題材としたフェルミ推定の出題例として、いくつか紹介していきます。
- 日本にあるコンビニの店舗数を求めてください。
- 東京都内にあるコンビニの店舗数を求めてください。
- コンビニ産業の市場規模を求めてください。
- 今年1年間、日本全国で新規で出店したコンビニの数を求めてください。
- とあるコンビニの1店舗の売上高を求めてください。
上記のように店舗数や売上高など、複数の切り口から出題される可能性があります。
それぞれの切り口により、最適なアプローチ方法は異なるので、まずはしっかりと問題の本質を捉えるようにすることが重要です。
また、個別コンビニ店の売上をフェルミ推定で求める場合には、その売上をどのように増やしていくのかというケースもセットで出題されることがあります。
いわば頻出中の頻出とも言える問題なので、過去問や例題でしっかりとトレーニングし、考え方を習得しておくようにしましょう。
「日本にあるコンビニの店舗数」をフェルミ推定で考えよう
実際にコンサルティングファームのフェルミ推定で出題されることも多い「日本にあるコンビニの店舗数」について、詳しく考えてみましょう。
STEP①コンビニの店舗数を求める複数のアプローチを考える
大前提として、フェルミ推定の考え方は1つではありません。
実際には、無数の切り口から考えることができます。
最初のステップとしては、複数の視点からコンビニの店舗数を求めるアプローチを考えることが重要です。
ざっと挙げただけでも、以下のようなアプローチ方法が考えられます。
- コンビニの市場規模を1店舗あたりのコンビニの売上高で除すことにより求める
- 日本人がコンビニを利用する数を1店舗あたりの平均客数で除すことにより求める
- 日本全国のコンビニでアルバイトをしている大学生の数を1店舗が雇用する大学生アルバイトの数で除すことにより求める
- 日本の小売店の全体数からコンビニ店の割合を乗算することで求める
- コンビニ1店舗がカバーする面積から全体のコンビニ数を求める
上記はあくまでも一例で、ほかにいくらでもパターンはあります。
まずはいくつか挙げたアプローチ方法のうち、自分がどのアプローチで攻めていくかを考えます。
コンサルティングファームでは、かなり独自性のあるアイディアが尊重される部分もあるので、フェルミ推定が得意なのであれば、他の人が思いつかないであろうアプローチ方法で攻めるのも効果的です。
しかし独自性があるアイディアでは、説明が長引きすぎる可能性もあるので、このあたりはうまくバランスを取って考えるようにしましょう。
実際にどのアプローチで攻めるべきかは、自分が持っている数値データに依存する部分もあります。
例えば4つ目の「日本の小売店の全体数からコンビニ店の割合を乗算することで求める」というのは、それぞれの数値データを知っていなければ、活用することができません。
その他4つのアプローチ方法については、現時点で数値データを持っていなかったとしても、さらに深掘りして要素を分解していくことにより、ある程度フェルミ推定が可能になるように思われます。
今回は、上記のアプローチ方法のうち「日本人がコンビニを利用する数を1店舗あたりの平均客数で除すことにより求める」という方法を採用することとします。
STEP②アプローチ方法ごとに要素に分解して簡単に公式を組み立てる
さて、フェルミ推定を解いていく方向性が決まりました。
簡単な公式にすると、以下の通りです。
日本にあるコンビニの店舗数=日本人が1日にコンビニを利用する回数÷1店舗あたりの平均客数
例えば全国民が合計で1日に5万回コンビニを利用したとします。
その1店舗あたりの平均客数が50人だったとしましょう。
すると日本全体に存在するコンビニの店舗数は1000店舗あるということになります。
しかし、当然ですがこの2つのデータが頭に入っている人はいませんよね。
そのため、この公式のままでは何も生まれません。
さらに要素を分解して考えていく必要があります。
STEP③求めるのが難しい項目をさらに分解して考える
この要素分解(因数分解)はフェルミ推定において最も重要です。
因数分解の工程で仕事の出来不出来が大きく表れると言っても過言ではないからです。
ここで適切な因数分解をすることができれば、その後の思考プロセスはグッと単純化し、非常に効率的な思考ができるようになります。
因数分解の過程において特に意識したいのが、MECEであることです。
MECEとは漏れなくダブりなくという、完全な状態を表します。
要素をMECEに分解できないようでは、コンサルタントとしてクライアントの相談やアドバイスを行う資格もありません。
では実際に「日本人が1日にコンビニを利用する回数」と「1店舗あたりの平均客数」をそれぞれ因数分解して考えてみましょう。
まずは「日本人が1日にコンビニを利用する回数」について考えてみます。
日本人が1日にコンビニを利用する回数は、日本人口×一人あたりのコンビニ利用回数により求められそうです。
しかし乳幼児や高齢者など、コンビニにアクセスすることすら難しいという人もいます。
さらに田舎や山間部であれば、コンビニ自体存在するということもありえます。
そういった人たちが合計でざっくり2000万人程度いると考え、母数となる人口を1億人としておきましょう。
ではコンビニを利用する人間は1人当たり1日に何回利用しているでしょうか。
中には1週間に1回しか使わないという人もいれば、毎日2回以上利用するという人もいるでしょう。
しかし、どれだけ多くても1日に3回くらいが限度ではないでしょうか。
ということでここでは1人当たり1日に0.8回くらいコンビニを利用するものと仮定してみます。
すると、日本人が1日にコンビニを利用する回数が求められます。
実際に式に当てはめると、1億人×0.8回で、合計8000万回です。
つまり日本人全員を合計すると、1日に8000万回コンビニを利用していると考えることができます。
続いて「1店舗当たりの平均客数」について考えてみます。
もちろん、ロケーションや時間帯などにより、大きく客数が変動する可能性はあるものの、あまり細かく考えすぎるといたずらに時間を消耗してしまうだけなので、ある程度ざっくりと考えることが重要です。
1店舗当たりの平均客数を求めるための公式としては、以下のような計算式が考えられます。
1店舗当たりの平均客数=レジの数×レジ1台当たりが1時間で対応する人数×営業時間(24時間)
レジの数は概ね2~3台程度ですので、ここでは2.5台と仮定しましょう。
ではレジ1台で一体何人を対応しているのか。
コンビニは大行列ができることも少なければ、全く客がいないということも少ないので、概ね15人程度と仮定しましょう。
もちろん時間帯やイベントの有無、曜日などにより変動する可能性はあります。
ということで、上記の条件を実際に代入してみると、1店舗当たりの平均客数が求められます。
1店舗当たりの平均客数=2.5台×15人×24時間=900人
つまり、コンビニ1店舗につき、1日に900人が来店しているということです。
STEP④実際に数値を代入する
さて、元となる数値が出そろったので、後は最初に立てた公式に代入するだけです。
日本にあるコンビニの店舗数=日本人が1日にコンビニを利用する回数÷1店舗あたりの平均客数
- 日本人が1日にコンビニを利用する回数:8000万回
- 1店舗あたりの平均客数:900人
上記を計算すると、8万8888店舗となります。
STEP⑤妥当性を検証する
さて、実際のコンビニの店舗数はというと、6万店舗程度と言われています。
今回の検証では、ちょっと数字がオーバーしてしまいました。
もちろん正確な数値を算出することが目的ではないものの、どう考えればより正しい数値を導き出せたのかを考える必要があります。
今回のアプローチでは、以下のような改善点が考えられるのではないでしょうか。
- そもそも母数を1億人と置いたのが大きすぎたのではないか
- コンビニを利用しない人も実は結構おり、1人8回利用するというのは大きく見積もりすぎたのではないか
- 田舎のコンビニで1日に900人も来店するのは考え難い。もっとセグメンテーションすべきだった
フェルミ推定はかなり思考時間も限られているので、実際にどこまで追求すべきかはしっかりと線引きすることが大切です。
実際の面接では、数値を推定し終えた後に改めて振り返り、マズかった部分はしっかりと修正していくという姿勢をアピールしましょう。
「とあるコンビニ店の1年間の売上高」をフェルミ推定で考えよう
続いて、「とあるコンビニ店の1年間の売上高」をフェルミ推定で考えてみましょう。
STEP①前提を確認する
まずは前提の確認が大切です。
というのも、コンビニ店はそのロケーションや競合の出店状況などにより大きく売上高が変動する可能性があるためです。
ここでは、東京都新宿区のオフィス街の一角にあるコンビニ店ということにします。
オフィス街なので、競合他店舗も近所にかなり出店しているということが想像できますね。
STEP②売上高を求める公式を立てる
続いてコンビニ店の売上高を求めるための公式を考えましょう。
売上高=来客数×単価
という公式でOKです。
STEP③要素を細かくセグメンテーションする【因数分解】
コンビニの売上は時間帯ごとに大きく異なります。
そのため、時間帯ごとにセグメンテーションして考えることが大切です。
今回は、朝(5時~10時)、昼(10時~15時)、夕方(15時~18時)、夜(18時~22時)、その他(22時~5時)という5つの時間帯に区分して考えてみます。
まず朝の時間帯は、朝食やその日の午前中に飲むための飲料を買いに来るビジネスマンが多く訪れることが予想されます。
平均単価としては300円くらいになるでしょう。
10分当たり5人程度がレジに並ぶ、つまり1時間に30人が来店すると考えられるので、この朝の時間帯の売上高は
売上高=30人×6時間×300円=5万4000円
となります。
昼の時間帯は、昼食やお菓子などの軽食、午後の仕事のための飲料を買いに来るビジネスマンが多く来店することが予想されます。
平均単価としては朝よりも高く、800円くらいになるでしょう。
特に昼休憩の時間帯は客が殺到することも考えられるため、10分当たりに8人程度がレジに並ぶ、つまり1時間に48人(計算しやすいように50人)が来店すると考えられ、昼の時間帯の売上は
売上高=50人×6時間×800円=24万円
となります。
夕方の時間帯は、コーヒーや軽食などを求めるビジネスマンがちらほら来店する程度でしょう。
平均単価としては300円くらいになると想定できます。
来客数もそれほど多くなく、1時間に20人程度でしょう。
よって夕方の時間帯の売上高は
売上高=20人×4時間×300円=2万4000円
となります。
夜の時間帯は残業のための夕飯や飲料、スイーツなどを購入するビジネスマンが来店することが予想されます。
またアルコールを購入しに足を運ぶ人もいるでしょう。
そのため単価は若干高めで1000円くらいになるでしょう。
しかしまだスーパーマーケットや飲食店は営業している時間であり、残業しないビジネスマンは家の近くで買い物することが予想されるので、それほど来客数は多くならないことが予想でき、1時間に20人程度と推測します。
よって夜の時間帯の売上高は
売上高=20人×5時間×1000円=10万円
となります。
最後、その他の時間は深夜残業や夜の仕事に向かう人が軽食を購入するために来店すると想定されます。
単価は300円くらいで、1時間当たり8人程度の来客となるでしょう。
よってこの時間帯の売上高は
売上高=8人×7時間×300円=1万6800円
となります。
ここまででセグメンテーションした時間帯ごとに売上高を以下のように算出することができました。
時間帯 | 売上高 |
朝 | 5万4000円 |
昼 | 24万円 |
夕方 | 2万4000円 |
夜 | 10万円 |
その他 | 1万6800円 |
STEP④セグメンテーションした時間帯ごとの売上高を合算する
あとは売上高を合算すればOKです。
計算してみると、43万4800円という結果になりました。
なお、実際のコンビニの売上高は1店舗当たり55万円程度と言われています。
これは全店舗の平均なので、新宿のオフィス街という立地条件を踏まえると、もう少し推定よりも大きな金額となっていいかもしれません。
この辺りはいくつか条件を修正することで、ある程度実際の値に近いデータを算出することができるでしょう。
例えば昼の時間帯は、店員も多くいるため、今回は1時間あたり50人という来客数で計算したものの、さらに多くの客数を集められる可能性もあります。
実際の面接では、面接官とのディスカッションを通じて修正することも大きな評価ポイントになりますので、しっかりと後から振り返りができるよう、分かりやすい思考メモを残しておくのがおすすめです。
まとめ:1つの問題から幅広いフェルミ推定の考え方を習得しよう
コンビニを題材にしたフェルミ推定は、コンサルティングファームの面接においてもよく出題される鉄板問題です。
しかし「コンビニの店舗数」なのか「コンビニの売上高」なのか、またこの記事では解説していませんが「コンビニの市場規模」なのか、そのテーマによりアプローチ方法は異なります。
どの問題が出題されても適切なアプローチを経て対応できるように、しっかりと自分の中で回答パターンを用意しておかなければなりません。
コンビニを題材にしたテーマに対応できるようになれば、他のフェルミ推定の問題にも応用できるようになります。
記事中でも説明したように、フェルミ推定のアプローチ方法は1つではありません。
同じ問題でも様々な方法でアプローチしてみることで、多角的に考えられるようになったり、思考が深まったりします。
コンサルティングファームの登竜門とも言えるフェルミ推定で高評価を得られるよう、様々な問題を使ってしっかりとトレーニングしておくようにしましょう。