「日本全国にあるマンホールの数はいくつですか?」
そんなの分かるわけないと思った方は、残念ながらコンサルティングファームの面接試験を突破することができません。
特に外資系を中心とした難関コンサルティングファームの面接試験においては、上記のような捉えどころのない数量について、自分で式を立案し概算していくという能力が求められます。
それが「フェルミ推定」という問題です。
もちろん正しい数値を出せなくても構いませんが、自分なりに論理立てて思考し、その出力した数値を面接官に発表します。
それまでの面接の質問回答を通じてかなり手ごたえを得ていたのだとしても、このフェルミ推定で芳しい評価を得られなければ、コンサルティングファームの内定を勝ち得ることはできません。
しかし、その逆もまた然りです。
この記事では、マンホールを題材にしたフェルミ推定について、租の出題例や回答アプローチ、そしてフェルミ推定の際に重要になるポイントなどを詳しく解説しています。
コンサルティファームへの就職や転職を目指しているという方は、是非参考にしてください。
「マンホール」を題材にしたフェルミ推定の出題例
まずは、マンホールを題材にしたフェルミ推定の出題例をいくつか紹介します。
3つ目はかなり上級レベルであまり出題例はありません。
やはり「特定の範囲内でどれだけマンホールがあるのか」という形式が多いですね。
マンホールはあまり販売されているようなものでもないので、カフェ店や自動販売機を題材にしたフェルミ推定のように、幅広い問われ方をするということはありません。
「マンホールの数を求める」という思考プロセスは、フェルミ推定の他の問題にもと応用することができますので、キホンのキと思ってしっかり習得しておきましょう。
「東京都内にあるマンホールの数」をフェルミ推定で考えてみよう
実際にコンサルティングファームの面接試験で「では、これから東京都内にあるマンホールの数を教えてください」というフェルミ推定が出題されたとします。
その具体的な回答アプローチについて、確認していきましょう。
STEP①マンホールの数を推定する仮説を構築する
当然ですが、いきなり当て勘で「10万個!」と言ったような回答をするのはナンセンスです。
仮にそれがほぼ正答だったとしても、そんなことは評価ポイントとはなりません。
まずはしっかりと筋道立てて考えるために、仮説を構築する必要があります。
前提として、フェルミ推定においてはこの仮説の構築が非常に重要。
というのも、コンサルタントとして仕事をしていく上では「仮説立案能力」が強く求められるためです。
まずはマンホールがそもそもどういう役割なのか考えてみましょう。
大きな目的としては、作業員が出入りして安定的な水の供給が行えるように適宜メンテナンスを行うということが挙げられます。
そもそもマンホールという名前が「Man(人)」と「Hole(穴)」に由来していますからね。
ではマンホールが必要になるのはどのような場所か、と言えば人がより多く集まる場所です。
逆にそれほど人がいない場所においては、多くのマンホールを設置する必要はありません。
以上のような条件から、以下のような仮説を構築することができます。
- マンホールの数は上下水道が普及している世帯の数と相関がある
- 東京は人口が多いので、他地域と比べるとマンホールの数が多くなる
仮説が出来上がったら、思考するための準備は整ったも同然です。
STEP②問題となる事項をいくつかの要素に分解する【因数分解】
上記で構築した仮説を元にして、以下のような計算式により東京にあるマンホールの数を求めることができると推測できます。
東京都内のマンホールの数=東京の世帯数÷マンホール1つあたりの世帯数
しかしこれだけでは、なかなか具体的なイメージをできません。
そこで、より具体的なイメージができるように事象を分解していく必要があります。
例えば東京の世帯数に関しては、東京都の人口をベースに考えることができます。
東京都の人口はおよそ1300万人です。
この数値を1世帯当たりの人数で除すことで、おおよその世帯数を求めることができます。
近年は核家族化が進行していることもあり、かつてのように何世代も同居しているというケースは稀です。
また、ビジネスの密集地ということもあり、一人世帯もかなり多く存在しています。
日本全国で見ても1世帯当たりの平均人数は2.3人程度となるため、東京はこれよりもさらに低い数値になると推測できるでしょう。
ここでは計算をそれほど複雑にしたくないので、キリのよい「2人」という数値に設定することにします。
これで東京都の世帯数を求めるための条件は出そろいました。
- 東京都の人口:1300万人
- 東京都の1世帯当たりの人口:2人
続いて、マンホール1つあたりの世帯数について考えてみます。
一口に世帯と言っても、一軒家もあればマンションもアパートもあるため、一概に1つのマンホールにつき何世帯があるとは言えません。
そのためここでも概算でOKです。
正直、マンホールによほど詳しくなければ、どのくらいの距離感覚で設定されているかなどは、全く分からないでしょう。
そこで自分自身のイメージに頼る必要があります。
まず、1世帯につき1つのマンホールがあるということはあり得ませんので、最低でもマンホール1つ当たりに2世帯以上はあるということが分かります。
ただ、2世帯というのも少し多すぎる気がしますね。
道路の10メートル刻みでマンホールが設置されているかと言われれば、そんなことはありません。
実際には人それぞれの感覚によりけりですが、私は概ねマンホール1つで40世帯くらいをカバーしているのではないか、と考えます。
東京には高層マンションも多いため、マンホール1つでカバーできる世帯数が多くなる傾向にあるためです。
ということで、各要素に関しての数値が出そろいましたので、再び整理してみましょう。
- 東京都の人口:1300万人
- 東京都の1世帯当たりの人口:2人
- マンホール1つ当たりの世帯数:40世帯
STEP③分解した構成要素に具体的な数値を代入していく
あとは最初に立てた公式に、上記の数値を代入していくだけです。
実際に計算してみると、
東京にあるマンホールの数=(1300万世帯÷2人)÷40世帯=16.25万個ということになります。
STEP④検証する
実際に概算が完了したらそれで終わりではなく、面接官に対してその思考プロセスも含めて発表します。
面接官は概ね正答を用意しているものです。
実際の数値と大きく乖離していた場合には、どのポイントがマズかったのかを検証し、改善を図る必要があります。
ちなみに、東京都下水道局が発行している『東京都下水道2014』によると、2013年度末時点での都内にあるマンホールの数は48万4078個だそうです。
今回の推定により算出した数値は16万2500個ですから、およそ3倍の乖離があることとなります。
これはかなり乖離幅が大きいので、どの思考プロセスで誤っていたのかを再検証しなければなりません。
例えばですが、以下のようなポイントはもう少し思考の余地があったと言えます。
- マンホール1つ当たりの世帯数を一律で40世帯とするのではなく、特別区と多摩地域でセグメンテーションすべきだったのではないか
- 1世帯当たりの人口も特別区と多摩地域でセグメンテーションする必要があったのではないか
改めて考えてみると、特別区の方がマンホール1つ当たりが掌握する世帯数が多いということがイメージできますね。
フェルミ推定の後は、面接官からの質問やアドバイスなどを通じて、さらに自分の思考を検証しながらブラッシュアップさせていくことが大切です。
フェルミ推定の際に重要なポイント
実際に面接本番でフェルミ推定を行う際に気を付けたい、重要なポイントについて解説します。
数値は間違って当然!評価されるのは数値を導き出すまでの思考プロセス
大前提としてフェルミ推定は、正しい数値を導き出すことが目的ではありません。
その数値を導き出すに至るまでの思考のプロセスが評価の対象です。
そのため、実際に計算する際にはある程度キリの良い数値を使って、計算を簡略化させる必要があります。
ただし、基本となる数値データが大きく間違っていると、実際の数値と大きく乖離してしまう可能性があります。
例えば今回の「東京都のマンホールの数」を概算する場合に、東京都の人口は5000万人というように数値設定していれば、大きく数値がぶれてしまうことは間違いありません。
また「自分は東京で家族と4人暮らししているから」というような感じで、1世帯当たりの人口を4人と設定するのも的外れです。
正確な数値を完全に把握しておく必要はないものの、常識として抑えておくべき数値はしっかりと知識としてインプットしておくようにしましょう。
なお、参考までにコンサルティングファーム内定者のフェルミ推定の平均的な数値のブレは1.3倍程度と言われています。
あくまでも参考までに、という情報ですが、やはりコンサルティングファームに就職できる人材は概算能力も非常に高いということが伺えますね。
大きく数値がブレた場合には、何がマズかったか振り返る
上記の実例でも紹介しましたが、フェルミ推定の数値は大きくぶれてしまう可能性もあります。
その時に「あ~ぁ、外してしまった」と残念がるのではなく、何が原因でそのような乖離を生んでしまったのか、しっかりと振り返らなければなりません。
このあたりの修正能力も、面接官は重要な評価ポイントとしています。
振り返りをしっかりと行えるようにするために大切になるのが、メモを残しておくことです。
メモにそれまでの思考プロセスをしっかりと落とし込んでおかなければ、何が原因だったのかを発見することはできません。
フェルミ推定中はかなり時間も限られており、プレッシャーもかかるという状況なので、なかなか落ち着いてメモを取ることはできないかもしれませんが、できるだけ後から振り返りやすいように、構造的なメモを取ることを心がけましょう。
メモをとる能力も、コンサルティングファームの面接では重要な評価ポイントになると言われています。
しっかりと構造的で分かりやすいメモをとっていれば、「仕事上の連絡事項もスムーズにできる」というような評価を受けられるためです。
逆に雑多で自分にしか分からないメモだった場合には、「ビジネス上のコミュニケーションに問題あり」という烙印を押されてしまう可能性もあります。
字を綺麗に書くということではなく、構造的で見やすい書き方にするということが重要です。
うまくロジックツリーなど、フレームワークを活用しながら構造的なメモを取るように心がけてください。
何度もトレーニングしていけば、必ずスピーディーかつ見やすいメモを書くことができるようになります。
根拠なき直感は絶対にNG
フェルミ推定では、最後に必ず具体的な数値を代入して、数量を計算する必要があります。
この代入する数値ですが、必ず根拠を持たせてください。
「なんとなくこのくらいだと思う」というような直感は絶対にNGです。
仮に直感で出した数値が当たっていたとしても、「リスクを顧みずギャンブル的なやり方で意思決定をする人間」と評価されてしまいます。
コンサルタントはクライアント企業の医者とも言われており、いわば生死のカギを握っているような立場なので、そんな仕事のやり方は許されるはずもありません。
なかなか根拠を見つけづらいような場合でも、様々なチャネルの知識を有していれば、それが組み合わさり、ひらめきが生まれる可能性もあります。
フェルミ推定はあくまでも実際の仕事のデモンストレーションだということを頭に入れて、必ず根拠を添えて説明するということを心がけましょう。
「マンホール」を題材にした問題はフェルミ推定の入門として最適
マンホールの数を求めるフェルミ推定は、他のテーマと比べると比較的アプローチが簡単です。
難易度の高いフェルミ推定の中では、初心者でも取っつきやすい内容と言えるでしょう。
そのため「これからフェルミ推定の勉強をして行きたい」と考えているビギナー向けのテーマと言えます。
「マンホールの数」を求めるというアプローチは、フェルミ推定のキホンのキです。
それをしっかりと身に着けることで、他の難しいテーマについても応用することができます。
まとめ:トレーニングを積めば誰でもフェルミ推定は上達できる
フェルミ推定は難関コンサルティングファームの面接を突破するためには、避けて通ることはできません。
最初に見た時はその難しさに辟易してしまうこともあるでしょう。
しかし、しっかりとトレーニングを積めば誰でも素早く正確な思考ができるようになります。
そしてフェルミ推定の能力は、実際のビジネスにおいても応用可能です。
この記事ではマンホールを題材にしたフェルミ推定の回答アプローチを紹介しましたが、このほかにも多様なテーマを題材としてフェルミ推定は出題されます。
コンサルティングファームへの就職や転職を目指している方は、色々なフェルミ推定の問題を解き、面接突破に近づけるよう頑張ってください。