「奨学金の機関保証は保証料がかかるから勿体無い」と思っていませんか。
現在、奨学金の返済ができなくなり、返済者だけでなく保証人や連帯保証人まで連鎖的に破産するケースが増えています。
奨学金の機関保証は毎月の保証料が必要になりますが、保証人や連帯保証人を立てる必要がありません。返済者が返済ができなくなっても保証機関が代わりに返済を行うので、保証人を巻き込んで借金地獄になることはありません。
この記事では機関保証について説明しています。機関保証を選択するか悩んでいる場合は、ぜひ参考にしてみてください。
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奨学金における保証料が必要な機関保証とは
JASSO(日本学生支援機構)が行っている奨学金には主に以下の4種類があります。
- 給付型奨学金
- 第一種奨学金(貸与型・無利子)
- 第二種奨学金(貸与型・有利子)
- 入学時特別増額貸与奨学金(貸与型・有利子)
貸与型奨学金には返済が不能になった時のために、奨学金の申し込み時に返済者に代わって返済する保証制度を選択する必要があります。給付型奨学金は返済の必要がないため、保証制度を選択することはありません。
JASSOの保証制度には以下の2つがあります。
- 人的保証
- 機関保証
人的保証は保証人と連帯保証人を立てて返済者が返済不能になった場合は返済者に代わり、保証人と連帯保証人が返済を行います。保証料はかかりませんが、返済に関するトラブルが多発しているため人的保証を選択するときは注意が必要です。詳細については後ほどご紹介します。
機関保証はJEES(公益財団法人日本国際教育支援協会)という保証機関に保証料を支払い、返済者が返済不能になった場合はJEESが代わりに支払いを行います。保証料は必要になりますが、JASSOの奨学金は経済的な理由で進学をあきらめる学生が減らすことを目的に国が運営しているため、教育ローン等と比較すると保証料は割安になっています。また、原則として奨学金申し込み時に機関保証を申し込む場合は、JEESが保証を断ることはありません。
機関保証の代位弁済を受けても債務は残る
代位弁済とは返済者が奨学金の返済不能になった時に、返済者の代わりに返済を行うことです。しかし、代位弁済後に返済が免除される訳ではないので注意が必要です。
JASSOの機関保証は図のような流れで奨学金の代位弁済が行われます。返済者の延滞発生後、督促をしても返済がない場合、保証機関であるJEESがJASSOへの代位弁済を行います。代位弁済後、返済者はJEESに返済をする必要があります。また、延滞が発生してから代位弁済が発生するため、返済者の延滞情報は個人情報新情報機関に提供されます。信用情報に傷がついているため、クレジットカードやカードローンなどの審査には通りにくくなります。
※出典:JASSO機関保証制度について
代位弁済後の返済は基本的に一括でJEESへ支払う必要がありますが、経済状況によっては分割返済や返済期限猶予を設けています。また、JEESへの支払いが延滞した場合にかかかる延滞損害金は、JEESに相談することで個別に対応してもらえる可能性があります。JASSOへの返済と比べると、個人の経済状況に応じて柔軟な対応が行われています。
詳細についてはJEES 機関保証制度のよくある質問についてをご確認ください。
代位弁済という名前から「機関保証を選べば、返済不能になったら奨学金を返さなくていい」という間違った認識をしやすいのでご注意ください。
保証料がない人的保証の注意点
人的保証は、奨学金の返済が延滞すると保証人と連帯保証人がJASSOへ一括返済しなければなりません。JASSOへの返済が完了しても返済者は保証人と連帯保証人へ返済を行う必要があります。
近年、奨学金の返済延滞が多いことが社会問題になっています。また、返済者が返済不能になることで、保証人になっている両親や連帯保証人になっている親戚が返済に困って芋づる式に破産することが増えています。
余談ですが、現在筆者の父も人的保証のトラブルに巻き込まれています。筆者の従姉妹が人的保証を選択しており、筆者の父親が連帯保証人となっています。連帯保証人になった当時は従姉妹の家庭は比較的裕福だった為、奨学金の返済に困るとは思っていなかったようです。しかし、従姉妹の両親の離婚や破産によって家計の状況が変わりました。また、そのような状況に加えて、大学卒業後に従姉妹が病気になったことで奨学金の返済が延滞するようになりました。私の両親は貯金がない為、もし連帯債務を負うことになった場合は破産するしかありません。その為、奨学金の返済をしたくない従姉妹一家と連帯債務を負いたくない筆者一家との泥沼化した争いが発生しています。お金のトラブルは時間も使いますし、何よりも精神的に疲弊します。また、昔は仲が良かったのですが、現在は見る影もなく虚しい気持ちでいっぱいです…。
多くの場合、奨学金を借り始める大学入学前後で人的保証か機関保証を選択します。大学卒業後に返済を行うことができるのか、全く分からない状態で保証制度を選択しなければなりません。人的保証は保証料がないという理由で選ばれることが多い状況です。しかし、人的保証を選ぶ場合は、卒業後に親族に迷惑をかける可能性があることを認識し、保証人や連帯保証人にも確認した上で人的保証を選択するようにしましょう。
奨学金を借りている途中で機関保証・人的保証を変更することは難しい
奨学金を借りるには機関保証か人的保証の保証制度を選択する必要があります。原則として奨学金を借りている途中で機関保証と人的保証を変更することはできません。
しかし、人的保証を選択している場合、奨学金を借りている途中で保証人や連帯保証人が破産や死亡した後に連帯保証人や保証人を探すことができない等、やむを得ない事情で人的保証を継続することが難しいことがあります。その場合は、人的保証から機関保証へ変更することができます。ただし、奨学金を借り始めた時から、機関保証加入時までの保証料を一括の支払いが必要です。また、債務を検討するほど経済的に厳しい状況の場合は、機関保証に加入することができないことがあります。
人的保証も機関保証も選択することができない場合は、奨学金を継続して貸与することができません。なお、機関保証を選んだ場合は、どのような理由でも人的保証に切り替えることはできないので、ご注意ください。
奨学金の機関保証を選択した時の保証料について
機関保証を選択した際の保証料は条件によって異なりますが、以下のような保証料になります。
種類 | 貸与月額 | 貸与期間 | 月額保証料 | 総額保証料 |
第一種奨学金 | 20,000円 | 48ヶ月 | 500円 | 24,000円 |
第一種奨学金 | 40,000円 | 48ヶ月 | 1,464円 | 70,272円 |
第二種奨学金 | 50,000円 | 48ヶ月 | 2,115円 | 101,520円 |
第二種奨学金 | 80,000円 | 48ヶ月 | 4,312円 | 206,976円 |
入学時特別増額貸与奨学金 | 200,000円 | 一括支払い | 3,930円 | 3,930円 |
入学時特別増額貸与奨学金 | 500,000円 | 一括支払い | 15,740円 | 15,740円 |
年度や条件によって機関保証料は異なるので、詳細については以下をご確認ください。
JEES 機関保証制度の保証料月額(目安)について
また、機関保証の保証料は毎月の奨学金が貸与される時に、保証料を引いた額が振り込まれるようになっています。別途支払いは必要ありません。
奨学金を繰り上げ返済すると機関保証の保証料が戻ってくる
JASSOでは以下のように奨学金の繰上返還や返還免除の適用を受けた場合、機関保証の保証料が一部戻ってくることがあるとしています。
次のいずれかに該当する場合は、支払われた保証料の一部を保証機関(協会)からお返しする場合があります。
- 全額繰上返還をして、返還期間が短縮されたとき。
- 一部繰上返還をして、返還期間が短縮され、返還が完了したとき。
- 機構の返還免除の適用を受け、返還が完了したとき。
JASSO 機関保証制度より(https://www.jasso.go.jp/sp/shogakukin/moshikomi/houhou/hosho_sentaku/kikan_hosho.html)
繰上返還をすることで、機関保証の保証料を安くすることができます。だだし、JASSOの機関保証に関する上記のページにも書いてある通り、「お返しする場合があります」という曖昧な書き方がされており、機関保証の保証料は戻ってこない可能性もあるので注意が必要です。実際に奨学金の繰上返還をすることになったら、必ずJASSOに問い合わせを行いましょう。
JASSOは機関保証への一本化を進めている
近年、人的保証を選択している返済者の保証人や連帯保証人が連鎖的に破産するケースが増加しています。そのほかにも、様々な事情から貸与済みの奨学金を回収できない状況が続いています。奨学金は貸与した後に返済を受けて、そのお金を新たな奨学生に貸与されています。貸与済みの奨学金が返済されない状況が続くと奨学金制度を維持することが難しくなります。そのため、JASSOでは回収が難しいケースがある人的保証を廃止して、確実に回収することができる機関保証への一本化を進めています。
なお、すでに返還方式の一つである所得連動返還方式を選択している場合は、機関保証のみしか選択できないようになっています。今後、人的保証は廃止される可能性が高いので、申し込み時に保証制度は確認しておきましょう。
奨学金の返済を考えると保証料がかかる機関保証がオススメ
人的保証は返済時に保証人や連帯保証人に金銭的な負担を強いる可能性があります。「人的保証は保証料が無いから」という理由だけで選択しないようにしましょう。人的保証を選択する場合は、必ず返済時に保証人や連帯保証人にリスクがあることを伝え、お互いにリスクを認識した状態で選択することをオススメします。
機関保証は保証料がかかりますが、返済できなかった時に連帯保証人や保証人への金銭的な負担を避けることができます。また、現在進行形で人的保証のトラブルに巻き込まれている経験上、仮に奨学金の返済ができなくなったとしても「保証人や連帯保証人に迷惑をかけるのではないか…」という心理的負担や、金銭的・精神的に余裕がない中での泥沼の争いが起こらないことは大きなメリットです。
保証人制度を選ぶ必要がある奨学金の申し込み時には、将来的に奨学金を返済できるか分かりません。金銭的な状況はあっという間に変わってしまいます。そのため、奨学金の保証制度を選ぶ場合は機関保証がオススメです。