大学生の約2人に1人が利用している奨学金。面接の際に「なぜ奨学金を借りるのか」と聞くと「親に言われたから」と答える学生が多くいます。
奨学金は借金です。卒業後の返済は親ではなく子供である学生本人です。
奨学金の返済で将来のライフプランにどのような影響があるかきちんと知っておく必要があります。
進学後も卒業後もお金に苦しまず、充実した生活を送れるように奨学金の利用について親子で考えて欲しい4つのことをまとめました。
節約のおすすめ
奨学金は親ではなく子供の借金です
子供の大学費用をまかなうために利用する教育ローンは基本的に親が借主となります。
しかし日本学生支援機構の奨学金の場合は、子供である学生本人が借主となり、卒業後の返済義務も子供に発生します。
奨学金に申し込むときはまだ高校生で希望に満ちた大学生活が待っています。
卒業後、20年後、30年後の生活や返済のことまで具体的にイメージして借りる人は少ないでしょう。
そのため親も一緒になって奨学金を借りることについて考えなければなりません。
誰も教えてくれない卒業後のこと
奨学金を借りるときは、低金利、ゆるやかな審査基準、誰でも借りれるとあって魅力的な部分ばかり見てしまいがちです。
実際は滞納者の増加が社会問題となっており、20代で自己破産、その連鎖で連帯保証人の親まで破産してしまう悲惨なケースも珍しくありません。
奨学金を借りる具体的なデメリットについては自分で調べない限り、知ることは少ないでしょう。ここでは卒業後の返済生活について具体的にご紹介します。
40歳まで毎月返済
奨学金を毎月いくらずつ、何歳まで返済するか知っていますか?
奨学金の返済期間はおよそ15年~20年です。卒業してから40歳過ぎまで毎月1.5万円~2万円ずつ返済し続けなければなりません。
その間に結婚、出産、家の購入、転職とライフスタイルが変わる上に、自身や親の病気、事故などが起こる可能性もあります。
ライフスタイルが変化しても40歳まで滞納することなく返済しつづける覚悟があるか、また滞納した場合のリスクも奨学金を借りる前によく考えておきましょう。
収入が足りず20代で自己破産
「奨学金で自己破産」するケースは近年ニュースになって知った人も多いと思います。
- 非正規雇用で年収が上がらず返せなくなった
- 体調を崩して働けなくなった
- 資格取得後、憧れの職種に就くも低月給で毎月の返済ができなくなった
- 親が病気になり生活費や借金を抱え支払いきれなくなった
奨学金を借りるときは就職して稼げば返せると考えがちですが、卒業後さまざまな理由で返済困難になることがあります。
自己破産した場合、本人の返済義務はなくなりますが、次は保証人や連帯保証人に督促が及びます。
70歳近くなって収入も少ない親に500万円の借金。保証人まで連鎖的に自己破産に追い込まれるケースも増えています。
結婚の足かせとなることも
ネットの掲示板でたびたび「奨学金の返済がある人と結婚しても大丈夫か」という質問を目にします。
奨学金といえど借金です。数百万円の借金があると分かり婚約破棄になってしまうことが実際にあります。
「奨学金くらいで別れないし、愛で乗り越えられるわ!」と思うかもしれませんが、結婚して1つの生計となったとき、生活費や大きな支出(出産、子供の教育費、家の購入、親の介護など)と合わせて毎月2万円の返済は想像しているより大変です。夫婦2人とも奨学金を借りていた場合、1,000万円近い金額を返済しなければなりません。
結婚だけでなく奨学金を返済するために、何かを我慢したり、諦めたりすることがあるかもしれないということを知っておきましょう。
奨学金を借りる前に親子で考えたい4つのこと
奨学金を利用して「子供の借金」を作る前に、借りる金額や返済プランなど親子で考えたい4つのことをまとめました。
具体的なお金の話や将来のライフプランについて語るのは面倒で少し恥ずかしいかもしれませんが、無計画に借りて卒業後の返済地獄に苦しむよりはマシです。しっかり向き合って考えてみましょう。
話し合いの際は、紙に書き出すことで情報を把握しやすくなり、問題や金額も明確になるのでおすすめです。
1.進学後の生活費と借りる金額
まずは、進学後の生活でいくらお金が必要になるか計算してみましょう。
- 入学金と年間の授業料がいくらかかるか
- 進学後の毎月の生活費を計算
- 学費を納めることで不足する金額
- 家計の中で節約できる金額
- アルバイトは授業と両立できるか、学費に充てられるか
現在の家計状況で足りなくなる金額を、貯蓄で補えるか、固定費等を見直して節約できるか、アルバイト代を学費に充てられるかなどを話し合います。
なんとなく「これくらい」「不安だから多めに」と借りる金額を決めると将来返済に苦しむことになります。現在の家計状況でどうしても足りない金額を奨学金から借りることが大切です。
2.卒業後の返済シュミレーション
進学後に必要なお金を計算したら、卒業後の生活や返済をイメージしてみましょう。
【大学で毎月10万円借りた例(第二種奨学金)】
貸与月額10万円、貸与総額480万円、人的保証、仮に金利0.5%だとすると、
- 返済月額:20,105円
- 返済総額:4,825,200円
- 返還期間:20年
大学卒業後、43歳まで毎月20,105円返済しなければいけない
日本学生支援機構の返還シミュレーションを利用すれば、金利の計算や返済年数(回数)を簡単に出すことができます。
子供だけでは社会人になってからどのくらいお金が必要になるか分かりません。税金なども自分で納めることになるので、卒業後の生活や返済計画まで親子でしっかり考えてみましょう。
3.日本学生支援機構以外で借りることを検討
奨学金=日本学生支援機構というイメージがあるかもしれませんが、学費を借りることができる機関は他にもたくさんあります。
進学先の大学や、地元企業、団体の奨学金制度が利用できるかどうか調べてみましょう。給付型の奨学金の場合は審査が厳しいですが返済不要です。
奨学金以外にも国の教育ローンや、銀行の教育ローンの利用を検討してみましょう。
日本学生支援機構の奨学金と比べると金利がやや高くなっていますが、親が借主となるので、子供の返済義務はありません。
必ず日本学生支援機構を利用しないといけない訳ではないので、自分たちにとって他にうまく利用できる奨学金やローンはないか調べてみましょう。
4.本当に進学する必要があるか
奨学金を借りてまで進学する必要があるか、借金を背負ってまで行く必要のある学校なのかもう一度考えてみましょう。
どうしても学びたいことがある、将来就きたい職種の資格を取るために単位や学歴が必要、など理由が明確であれば進学する意味はあると思います。
大卒でないと就職できない。というのは、ほんの一部の大企業に限られたことであり、残り99%の中小企業は学歴のみで採用を判断することは少ないでしょう。
大卒が就職に有利というのは学力の高い大学のみです。国公立やMARCH、関関同立以下のレベルの大学であればそこまで学歴を重視することはありません。
目的が曖昧で学力もそこまで高くない大学への進学を希望している場合は、本当に奨学金を借りてまで行く必要があるのかよく考えてみましょう。
奨学金が必要!親を説得するフレーズ集
親に進学の相談したときに、お金がないから学費は出せないと言われたり、将来の負担になるからと奨学金の利用を反対されてお困りの方へ、進学を諦めなくて済むように親を説得する方法をご紹介します。
奨学金を借りてまで学びたい、奨学金を借りることについてきちんと理解しているという姿勢を見せることが重要です。
進学したい理由や入学後のプランを明確に
ただ感情的に「入りたい!」と言うだけでは何も伝わりません。
「奨学金を借りてまで行きたいの?」と聞かれたときに学びたい理由を具体的に説明できるようにしておきましょう。
こんなカリキュラムがあり、このゼミに入って特定の分野を学びたい、就職や将来の職種に活かしたいなど「どうしても進学先に入学して勉強したい」ということを伝えます。
入学後の生活について、自分のお小遣いや教材費など、お金のやりくりをどうしていくのか、アルバイトと授業は両立できるのかなども考えておき、自立していくことができる姿勢を見せましょう。
必要な金額や手続きを具体的に伝える
進学にはいくら必要なのか。入学金や学費についてきちんと調べて計算します。
学費だけでなく、教材費や学校までの交通費、入学後必要になる生活費まで明確にしておきましょう。
その上で奨学金を借りる必要性と借りる金額を話せば伝わりやすくなります。可能であれば表に書き出しておくと良いでしょう。
また手続きの流れや必要書類を把握しておき、「自分でおおよその手続きができるので親に面倒はかけない」ということを伝えます。奨学金を借りる際の内容について質問されたときに答えられるよう、ホームページや募集概要の冊子をよく読んでおきましょう。
アルバイトと両立することを約束する
できるだけ学業が優先なのでアルバイトばかりはあまり良いとは言えませんが、家計の状況によっては仕方ありません。親の考え方別にフレーズを分けました。
【奨学金は負担になるからと反対するの親の場合】
奨学金で学費や生活費をまかなうわけではなく、毎月のアルバイト代からも学費を出す。
奨学金だけで学費をまかなおうとするよりアルバイト代からも学費を納めることで、奨学金を借りる金額を抑え将来の返済額が大きくなるのを防ぎます。
【お金がないから進学させられないという親の場合】
- 奨学金を借りることで授業とアルバイトの両立ができ、学費を自分でなんとかすることができる。
- 奨学金から学費を助けてもらう分アルバイト代◯円なら家計に貢献できる。
自分で学費をまかなえる姿勢を見せたり、家計に貢献すると約束することで進学を許してもらえる可能性が高くなります。
ただし奨学金は将来返済できる無理のない金額を借りるようにしましょう。
返済はいつから?滞納したらどうなる?
奨学金の返済開始は卒業した年の10月から始まり、毎月27日に銀行口座から自動引き落としされます。
借りるときは大丈夫と思っていても、いざ返済がはじまると返済に苦労し滞納してしまうことがあります。
滞納してブラックリスト入りや差押え、最悪の場合自己破産に至るケースも。どうしても返済が困難な場合は返済を猶予してもらったり減額することもできます。
滞納したらどうなるのか見ていきましょう。
滞納すると督促状が届き差押えも
奨学金は毎月自動引き落としなので「うっかり指定口座にお金を入れ忘れた」と滞納してしまうことがあるかもしれません。
長期滞納し続けると、ブラックリスト入りするだけでなく一括返済を請求されたり、差押えなどの法的措置が取られることも。
【滞納から差押えまでのおおまかな流れ】
- 滞納1ヶ月~:電話や文書での督促(保証人や連帯保証人へも督促通知がいく)
- 滞納2ヶ月~:5%(年率)の延滞金発生
- 滞納3ヶ月~:個人信用情報機関に個人情報が登録される(ブラックリスト入り)
- 滞納4ヶ月~:保証会社が代位弁済(肩代わり)し、保証会社から一括返済を求められる場合がある
- 滞納9ヶ月~:債権回収会社から一括返済を求められる場合がある
裁判所を通して法的措置が取られる(給料差押えなど)保証人、連帯保証人への請求
滞納してしまうと、借りた奨学金にプラスして延滞金、裁判所への訴訟費用も請求されます。この間にも延滞金がどんどんかさんでいくので当初の返済予定総額より膨大な金額となります。
ブラックリストに注意
3回滞納してしまうと個人信用情報機関に登録されてブラックリスト入りしてしまいます。
ブラックリストが解消されるのは完済から5年後です。
500万円近い奨学金を完済+5年は新規クレジットカードの作成や各種ローンが組めません。
車のローンや住宅ローン、歯科治療の医療ローンや子供の教育ローンの審査も通りません
。場合によってはスマホの分割支払もできなくなります。今後何十年もローンを組めないとなると生活する上でかなり不利になるでしょう。
電話や督促状を無視しているといつの間にかブラックリスト入りすることになります。滞納してしまったらただちに滞納分を返済するか、返済困難な場合は日本学生機構へ相談し救済措置を取りましょう。
返済の猶予や減額制度が利用できる
経済困難(年収が300万円以下など)、災害、病気、失業などにより返済が困難な場合は、返済の猶予や減額制度を利用することができます。
- 返還期限猶予:月々の返済を先延ばしにする制度で最長10年猶予してもらえる
- 減額返還制度:月々の返還額を1/2か1/3に減らした金額ずつ返済できる
この制度を利用している間は利息が付かないので、完済までの期間が長くなっても返済予定総額は変わりません。
どうしても返済困難な状況になった場合は、このような救済措置が取れることも覚えておきましょう。
減額返還、返還期限猶予の審査基準や詳細は日本学生支援機構のホームページにてご確認ください。
奨学金を借りる前に親と一緒によく話し合おう
何度も繰り返しになりますが、奨学金は親ではなく子供の借金です。
奨学金を借りるときに親子で考えてほしいことや知ってほしい現状をお伝えしました。
マイナスな部分は誰も親切に教えてくれず、自分で調べない限り知ることはほとんどありません。
子供だけにまかせきりにするのではなく、親に言われたからと借りるのではなく、親子で将来についてしっかり考えましょう。